うなぎをもっと楽しむコラム
国産うなぎと外国産うなぎの違い
2024.04.26 | コラム
当店『うなぎの井口』は、浜名湖名産のうなぎの白焼をメインとした専門店です。皆さんご存じのように日本に流通しているうなぎには日本国産と外国産のうなぎがあります。うなぎの井口のうなぎの白焼や蒲焼は、すべて国産うなぎで提供しておりますが、意外と外国産のうなぎも国内には流通しています。
国産うなぎと外国産うなぎの違いって皆さんご存じですか?…意外とその違いを知らない(わからない)方も多いかと思います。そこで今回は、この道35年、うなぎのプロであるうなぎの井口店主の井口恵丞が、国産うなぎと外国産うなぎの違いについて解説します。
国産うなぎと外国産うなぎの種類と養殖場所
うなぎは採れた場所ではなく、どこで一番長く育てられたかによって国産・中国産の定義が変わっています。外国産の養殖場所として一番多いのは中国。その後台湾と続きます。その他の国でもウナギの養殖は行われているところもありますが、あまり盛んではありません。なぜなら日本や中国沿岸でウナギの稚魚(シラスウナギ)が獲れるからです。
他にもフィリピンでもうなぎの養殖は行われています。フィリピンでは、4種類か5種類のうなぎの稚魚(シラスウナギ)が獲れます。うなぎの稚魚は非常に繊細で、4種類や5種類の稚魚を一緒に池に入れてしまうと育成法の違いから1種類しか生かすことができません。
最も多い品種に合わせると残りの稚魚は死んでしまいます。そのため、たくさんの稚魚を池に入れて養殖しても、1種類の稚魚のみが育つという育て方で、生育にムラがでてしまうのです。
国産うなぎについて
日本で養殖されているウナギのほとんどは、ニホンウナギという品種のうなぎです。日本の南2000kmほどのところにあるマリアナ海溝で生まれたうなぎの稚魚が海流に乗って日本近海に流れ着き、河口付近でシラスウナギとして育ちます。それを捕獲して養殖しています。ニホンウナギの身は、細くて長く、旨味が濃いのが特徴です。
中国産ウナギについて
中国産のうなぎの多くは、ヨーロッパウナギという品種のうなぎで、一部ニホンウナギも養殖されています。ヨーロッパウナギは北太平洋のサルガッソー海と呼ばれる海域で生まれたシラスウナギで、地中海沿岸の北アフリカからほぼヨーロッパ全域に分布しているウナギです。
中国では、そのヨーロッパウナギの稚魚を多く養殖しています。ニホンウナギに比べてヨーロッパウナギは、長さが短くその分身が太く、脂がよくのっているのが特徴です。ちなみに、中国の沿岸で獲れるシラスウナギはニホンウナギです。そのため、中国でも日本と同じくニホンウナギを養殖しているところもあります。
養殖方法の違い
中国と日本では、うなぎの養殖方法が異なります。日本の養鰻場は、ビニールハウスをかぶせたプールのようになっています。このプール、システムが秀逸で、うなぎの養殖に適した28℃前後の水温に調整できるのです。万が一病気などが発生した場合は、水温を33℃くらいに上げて殺菌します。栄養たっぷりの食事で育ったうなぎたちは、大きさに合わせてそれぞれのプールに分けられ育てられます(分養)。
分養することで人口密度ならぬうなぎ密度が低くなり、成長速度が遅いうなぎもきちんと食事できるので、ストレスなく成長します。このようなハウスの養鰻場で、シラスウナギは6ヶ月~1年半ほどかけて養殖されます。日本ではその養殖のうなぎを半年から一年かけて餌や環境に配慮しながら育てられます。
一方、中国では、「路地池」と呼ばれる広い池で養殖されます。路地池は地面に掘った穴で、イメージ的には田んぼをそのままうなぎのための池にしたようなものです。以前は日本でも路地池を養鰻に使っていましたが、温度管理はもちろん、病気が発生しても食い止めることができないなど管理が難しかったため、現在のハウス式になっています。
中国では管理の難しい屋外の池でうなぎを養殖しますが、気候がうなぎを育てるのに合っている地域を選んで養鰻場を作っています。自然な場所で養殖できるというメリットはありますが、温度管理や病気の予防が難しいなどの欠点があります。しかし、コストは抑えられるため大量の養殖が可能な他、2~3年養殖するのでサイズも大きく育てることもできます。
うなぎの井口のうなぎ
うなぎの井口のウナギは100%国産のニホンウナギを提供しています。国内でもウナギ養殖の産地は様々です。それぞれの産地でもうなぎの稚魚を池に入れる時期もまちまちです。そのため、毎年同じ時期に同じ産地のうなぎの品質が一緒かどうかは別物です。
当店では、仕入れの際には毎回今どの産地のうなぎが良質かをうなぎ問屋さんと情報交換しながら良質な産地のウナギを仕入れています。複数の問屋さんから情報を仕入れ、情報を精査して仕入れるノウハウが当店にはあります。
また、仕入れたウナギは地下から汲み上げたアルプスの伏流水で活かし、養殖池の泥臭さを抜いてから捌きます。うなぎを活かすのに適した水温は17度~19度。汲み上げた伏流水は平均18度と通年安定した温度で、うなぎにも非常に良い影響を与えてくれます。
実は、池から出荷したうなぎを問屋さんから仕入れる際、問屋さんによって仕入れから出荷までのリードタイムはバラバラになります。短いと環境が変わりすぎてうなぎが弱かったり泥臭かったり…そういう場合には、当店で少し長めに生かして泥抜きをします。仕入れたうなぎの質を見極め、順番に捌いて焼き上げる。そうした技術と経験がうなぎの井口にはあります。ご安心して当店のうなぎをお愉しみください。
井口 恵丞(いぐち けいすけ)
有限会社うなぎの井口 代表取締役
昭和63年創業、うなぎの白焼のみを販売する「井口うなぎ白焼直売」の2代目として平成8年に後を継ぐ。
以降、法人化、蒲焼やうなぎ関連商品の開発と販売、ビジネスコンテストや店舗の改善で受賞。国際的な味覚の審査機関、「国際味覚審査機構」でうなぎで初めて「優秀味覚賞」を受賞。
毎日うなぎをさばき、うなぎの良し悪しを確認することがを日課としています。