うなぎをもっと楽しむコラム
うなぎってどうやって大きくなるのか?
2022.01.28 | コラム
うなぎは、民間人が宇宙旅行に行くようになった2022年現在でも、まだまだその人工孵化技術が確立していません。その最大の理由は、うなぎの産卵成長についてはまだまだ謎が多いためです。今回はうなぎの産卵から生育までについて、現在わかっているレベルでご紹介したいと思います。
うなぎは卵から孵化し、育ちます。産卵場所は日本から2,500km以上離れたはるか遠くのフィリピン近海のマリアナ海溝だと言われています。マリアナ海溝は世界で最も深い海溝で、日本で捕れるうなぎはそこでしか産卵しないと言われています。
天然うなぎは産卵をするために秋に海へ向かって川を下り、マリアナ海溝に泳いでいきます。そのうなぎは「銀うなぎ」や「下りうなぎ」と呼ばれ、産卵のため大きく成長したうなぎで、体色がいぶし銀色に光り、胸鰭が黒いなどの特徴があります。
日本や中国、韓国から海を泳いでマリアナ海溝で産卵するのですが、マリアナ海溝に着く直前に「塩分フロント」という海水の塩分濃度が変わる場所があります。塩分フロントを通ることでうなぎは産卵場所を認識し、産卵すると言われています。孵化したうなぎは体が小さく自分の力で泳ぐことができません。そのため、海の潮の流れに沿って泳ぎますが、その間は、マリンスノウと呼ばれる動植物プランクトンの死骸を餌として成長します。
うなぎの稚魚は「学名:レプトセファルス」と呼ばれています。餌を探して食べるというより海中に漂っているマリンスノウが口に入って捕食をするという感じで餌を食べます。これによってうなぎの稚魚は徐々に成長していきます。そして、海流に乗って台湾や韓国、中国、日本へと泳いでくるのです。
現在でもうなぎの稚魚の人工孵化技術は確立されていません。一番は稚魚の時の餌は見つかったものの、餌自体が絶滅危惧種であることが最大のネックですが、他にも小さな水槽で管理しながら育てていくレベルでとどまっており、商業ベースで考えるとまだまだ課題は多いです。ただ、確実に以前に比べ研究は進められていますので、遠くない未来にうなぎの人口養殖技術が確立され、皆さんが今よりも手軽に多く召し上がっていただける食材になることを私たちも期待しています。
日本への海流は回帰海流で、太平洋を循環しているため、日本で大きくなったうなぎはマリアナ海溝に向かい、再び孵化したうなぎが日本に戻ってくるのです。
井口 恵丞(いぐち けいすけ)
有限会社うなぎの井口 代表取締役
昭和63年創業、うなぎの白焼のみを販売する「井口うなぎ白焼直売」の2代目として平成8年に後を継ぐ。
以降、法人化、蒲焼やうなぎ関連商品の開発と販売、ビジネスコンテストや店舗の改善で受賞。国際的な味覚の審査機関、「国際味覚審査機構」でうなぎで初めて「優秀味覚賞」を受賞。
毎日うなぎをさばき、うなぎの良し悪しを確認することがを日課としています。